
国際社会の反発強まるなか、戦争長期化の行方は
ガザで拡大する被害
パレスチナ自治区ガザでは9月26日、イスラエル軍による攻撃で少なくとも50人が死亡したとガザ民間防衛隊が発表した。一方で、別の報道機関は「20人以上」とするなど死者数にはばらつきがあり、戦況の混乱が数字の把握を難しくしている。
現地では医療機関の機能が壊滅的に損なわれ、薬品や電力の不足で治療が滞っている。住民は避難を余儀なくされ、食料や水の確保すら困難な状況が続く。国連はすでにガザ全域で人道危機が深刻化していると警告している。
ネタニヤフ首相、国連で強硬演説
同日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はニューヨークで開かれた国連総会に出席し、注目の演説を行った。首相はハマスを「テロの機械」と呼び、「我々は作戦を完遂しなければならない(finish the job)」と発言。戦闘を継続し、ハマスを徹底的に弱体化させる姿勢を改めて強調した。
この発言は国内向けには強硬な姿勢を示すことで支持層の結束を図る狙いがあるとみられる。一方で、国際社会では「さらなる民間人犠牲を招く」との懸念が高まり、演説中に複数の国の代表団が退席する事態となった。
ガザに直接「演説放送」
イスラエル政府はさらに異例の手段に出た。報道によれば、ネタニヤフ首相の演説内容をガザ住民に直接伝えるため、スピーカーや電話回線を通じて放送したという。これには「心理戦」の要素があるとみられるが、ガザの住民にとっては爆撃と避難のさなかに届く首相の強硬メッセージであり、反発や不信感を強める可能性もある。
国際社会の反応
国連加盟国の多くは停戦や人道支援拡大を求めている。欧州連合(EU)は「民間人保護が国際人道法の基本原則だ」と強調し、アラブ諸国は「虐殺の継続」と強く非難。国際刑事裁判所(ICC)による調査や、イスラエルへの外交的・経済的圧力強化を求める声も高まっている。
一方、米国はイスラエルへの軍事支援を継続しつつも、バイデン政権内部では「人道支援回廊の確保なしに戦闘継続は支持できない」との意見も出ており、同盟国の間でも立場の違いが鮮明になりつつある。
「作戦完遂」の現実性と課題
ネタニヤフ首相が繰り返し掲げる「作戦完遂」とは、ハマスの軍事力を徹底的に削ぐことを意味する。しかしガザには地下トンネル網が張り巡らされ、ハマスは都市部に潜伏しゲリラ戦を展開している。完全な壊滅は現実的に困難とする見方が専門家の間で広がっている。
さらに、戦闘が続けば続くほど民間人の犠牲が増加し、イスラエルは国際的孤立を深める。軍事的勝利が政治的敗北につながるという逆説的な状況に陥るリスクも否めない。
今後の見通し
ガザの人道状況は日に日に悪化しており、国際社会が停戦を求める圧力はさらに強まるとみられる。イスラエルが「作戦完遂」を優先するのか、それとも外交的妥協に応じるのか――その選択は中東の安定だけでなく、国際秩序全体に影響を及ぼす可能性がある。
戦争の長期化は、地域の緊張をさらに高め、周辺国の巻き込みを招く危険もある。ガザの空爆で犠牲になるのは多くの場合、子どもや女性を含む民間人であることを考えれば、国際社会がどこまで実効性ある圧力をかけられるかが試されている。

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