
ロサンゼルスの夜、ドジャースタジアムが揺れた。
2025年10月2日(現地時間)、ナ・リーグ・ワイルドカードシリーズ第2戦。シンシナティ・レッズとの一戦で、ロサンゼルス・ドジャースの右腕・山本由伸(26)が 7回途中4安打2失点(自責0)、9奪三振、自己最多の113球 を投げ抜き、チームをシリーズ突破へと導いた。
この白星は、 日本人投手としては松坂大輔(2007年レッドソックス)以来17年ぶりのポストシーズン勝利投手 という快挙。ルーキーイヤーからメジャーの大舞台で歴史的瞬間を刻んだ。
◆ 立ち上がりの苦境と「修正力」
試合は決して順風満帆ではなかった。
初回、味方の守備の乱れも重なり2点を失う。しかし山本は動じなかった。直球の伸びとスプリットの落差で打者を翻弄し、2回以降はギアを一段上げる。
2回から5回にかけては 11者連続アウト。テンポの良い投球でレッズ打線を沈黙させ、ドジャースベンチのムードを一変させた。スタンドからは「ヨシ!」のチャントが響き、異国の地で日本人右腕が完全に観客の心をつかんだ瞬間だった。
◆ 113球に込めた執念
迎えた7回。球数は100を超えていたが、ロバーツ監督はマウンドを降ろさなかった。山本が放った113球目の直球に、観客は総立ちで拍手を送った。
マウンドを降りる彼に注がれたスタンディングオベーションは、まるでベテランエースへの称賛のよう。試合後、山本は穏やかな笑顔でこう語った。
「自分の力以上のものを出せた。こういう舞台で投げられるのは、選手としてすごく幸せです」
◆ チームメイトと監督の称賛
ドジャース打線も奮起し、8点を奪取。試合は8-4でドジャースが勝利し、シリーズ突破を決めた。
ロバーツ監督は会見で「彼の冷静さと闘志がチームを落ち着かせた。これがエースの投球だ」と称賛。
さらに現地メディアも「メジャー1年目にしてすでに真のビッグゲーム・ピッチャー」「大谷不在のチームを背負う男」と大きく報じている。
◆ 歴史的意味と数字の裏付け
- 日本人ポストシーズン勝利投手:松坂大輔以来17年ぶり
- 113球:メジャー自己最多投球数
- 9奪三振:メジャーデビュー後の最多奪三振タイ記録
- 11連続アウト:今季自身最長記録
これらの数字が示すのは、ただの「好投」ではなく、歴史的瞬間だったということだ。
◆ さらなる舞台へ
ドジャースはディビジョンシリーズへと駒を進める。山本の次回登板は未定だが、短期決戦の流れを握る存在となるのは間違いない。
本人は静かに言った。
「どんな舞台でも、自分の仕事をするだけです」
世界が注目するその右腕から、次はどんなドラマが生まれるのか。

コメント