新入社員の自殺、化粧品会社に1億5千万円支払い命令

2025年9月9日、東京地方裁判所は、化粧品会社「ディー・アップ」に勤務していた新入社員の女性が社長によるパワーハラスメントを苦に自殺した事件で、同社に対し遺族に1億5千万円の調停金を支払うよう命じる決定を下した。企業のパワハラに対する責任を明確にした画期的な判決として注目される。

事件の概要

  • 被害者:里実さん(仮名・25歳)、2021年4月に新卒で入社
  • 加害者:ディー・アップ社の坂井満社長
  • 経緯:
    • 2021年12月、業務上の小さなトラブルを理由に坂井社長から約50分間にわたり厳しい叱責を受ける
    • その後、うつ病と診断され休職
    • 2022年8月に自殺未遂、2023年10月に死亡
  • 労基署の認定:2024年5月、社長によるパワハラが自殺の原因と正式認定

調停決定の内容

  • 調停金:ディー・アップ社は遺族に対し1億5千万円を支払う
  • 社長の辞任:坂井社長は調停決定の翌日、2025年9月10日付で退任
  • 謝罪:会社はパワハラが自殺の原因であることを認め、遺族に謝罪

社会的影響と企業対応

ディー・アップ社は再発防止策として以下を発表した:

  1. ハラスメント防止規定の見直し
  2. 全社員向けの研修実施
  3. 社外相談窓口の設置

今回の裁定は、企業がパワハラに対してどこまで責任を負うのかを明確化し、労働環境改善の指標として注目される。

遺族の声

里実さんの母親は「目の前から娘がいなくなってしまったことを、今でも信じることができません」と述べ、姉も「頑張っている人を潰すようなことはやめてほしい」と訴えている。遺族は、娘の名誉回復と再発防止の徹底を求めている。

総括

今回の事例は、単なる個人の不幸ではなく、企業の社会的責任と安全な職場環境の確保という観点から重要な意味を持つ。パワハラは被害者個人の問題にとどまらず、社会全体に影響を及ぼすリスクであることを改めて示す事件である。

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