
2025年10月4日(フィラデルフィア)
秋風が舞うフィラデルフィアの空に、異国から来た若き右腕が“異次元の速球”を響かせた。
ロサンゼルス・ドジャースの 佐々木朗希 が、ナショナルリーグ地区シリーズ(NLDS)第1戦でメジャー初のポストシーズン登板に臨み、完璧なピッチングでチームを勝利へ導いた。
スコアは ドジャース5–3フィリーズ。勝負を決めたのは打のテオスカー・ヘルナンデス、そして守りの朗希だった。
■ 9回のマウンド、163キロが唸った
「クローザー佐々木朗希」──この響きに違和感を覚える人は、もういないだろう。
9回裏、2点リードで迎えた最終回。ロバーツ監督がブルペンに視線を送ると、そこには静かに立ち上がる背番号17の姿があった。
マウンドに上がる朗希。フィリーズの本拠地シチズンズ・バンク・パークが一瞬、息を呑む。
そして初球――101マイル(約163キロ)のフォーシームがキャッチャーミットに突き刺さった。
電光掲示板の数字が赤く光った瞬間、観客席からどよめきが広がった。
続く打者ハーパーを力で押し込み、外角高めのスプリットで空振り三振。
二死一塁となった後も一切動じず、最後はカステヤノスをスプリットで三球三振。
試合終了。
朗希が右拳を強く握ると、ベンチから飛び出すチームメイトたち。
ドジャースは地区シリーズ初戦を完璧な形でものにした。
■ 「世界が見た」令和の怪物
この日の佐々木は、わずか 1イニング・無失点・1奪三振・最速163キロ。
だが、数字以上に印象的だったのはその存在感だった。
ポストシーズンという極限の舞台で、表情ひとつ変えずに投げ込む姿。
ハーパーやリアルミュートといった強打者たちが、明らかに“振らされている”様子が中継カメラに映る。
一球ごとにスタンドが沸き、メジャー中継の実況アナウンサーはこう叫んだ。
“This kid from Japan is something else!”(この日本の若者は本当に別格だ!)
■ チームを救う勝利の方程式
ドジャースはこの試合、序盤は苦しんだ。
先発のグラスノーが2失点を喫し、攻撃陣もフィリーズ左腕サンチェスの前に沈黙。
だが6回、キケ・ヘルナンデスのタイムリーで追いつくと、7回にはテオスカー・ヘルナンデスが特大の3ランホームランを放ち、試合をひっくり返した。
試合後、ロバーツ監督は朗希の起用についてこう語っている。
「彼を最後に送るのは迷いがなかった。あの球速、あの制球力――どの打者も打てない。彼はこのチームの未来そのものだ。」
佐々木はその言葉に、いつものように淡々と応えた。
「チームが勝つことだけ考えていました。自分の仕事をしただけです。」
■ 日本からメジャーへ、静かなる革命
今季途中、日本のロッテからドジャースへ移籍した佐々木。
20代前半ながら、彼の持つ「163キロ+スプリット」という武器はすでにメジャーでも唯一無二。
シーズン終盤にはセットアッパーとしての起用も増え、ポストシーズンを前に守護神に抜擢された。
大舞台でその期待に応えたことで、チーム内での立ち位置は確固たるものになった。
メディアの間では、早くも「ドジャースのマリアーノ・リベラ」と称され始めている。
■ ファンが熱狂した「一瞬の163キロ」
SNS上では試合直後から「Roki Sasaki」がトレンド入り。
X(旧Twitter)には次のような投稿が並んだ。
- 「あのスプリットは魔法だ。打者が止まって見える」
- 「ハーパーが首を振って笑った。彼も驚いてたんだ」
- 「日本から来たサムライが、フィラデルフィアを凍らせた夜」
米スポーツ専門局ESPNも、試合ハイライトの冒頭で佐々木の登板を大きく取り上げ、
“Roki Sasaki closes the door with 101 mph heat.”
と見出しを付けた。
■ 次戦に向けて ― 静かなるエースの眼差し
試合後、クラブハウスでの朗希は終始無表情だったという。
通訳を介したインタビューで「満足していますか?」と問われると、彼は短くこう答えた。
「まだ、シリーズは始まったばかりです。」
その言葉通り、ドジャースにとってこの勝利は第一歩にすぎない。
だが、この夜、確かに“新たな守護神の誕生”を誰もが目撃した。
■ 編集後記
佐々木朗希は今、メジャーリーグという巨大な舞台で“静かな革命”を起こしている。
その姿は派手なパフォーマンスではなく、黙々とした完璧主義に支えられている。
この夜、彼の投げた163キロのフォーシームは、ドジャースにとっての勝利以上の意味を持っていた。
それは、日本野球の誇りを背負った若者が、世界最高峰の舞台で「本物」であることを証明した瞬間だった。

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