
2025年9月7日、タイ・バンコク。女子バレーボール世界選手権3位決定戦。
日本代表は強豪ブラジルに挑み、最後は 2–3(12-25, 17-25, 25-19, 29-27, 16-18) のフルセットで涙をのんだ。
メダルには届かなかったが、コートに刻んだドラマは、間違いなく日本バレー史に残るものとなった。
絶望から始まった試合
第1セット、日本は相手の高さと力強さに押し込まれ、わずか12点。第2セットも17点に終わり、スコアは0–2。
ベンチには重苦しい空気が漂った。観客席からはため息さえ漏れ、「このまま終わってしまうのか」という不安が広がった。
しかし、日本はここから変貌を遂げる。
佐藤淑乃、魂の34得点
第3セット、エース佐藤淑乃が躍動した。高く跳び上がった彼女のスパイクは、ブラジルのブロックを切り裂き、コートに突き刺さる。
一打ごとに拳を握り、仲間を鼓舞する姿に、会場の空気が一変する。25–19で奪った瞬間、日本ベンチは立ち上がり、歓声が爆発した。
第4セットはまさに死闘。点を取ってもすぐ取り返され、互いにマッチポイントを握る緊迫の攻防。
最後は石川真佑が強烈なクロスを打ち込み、29–27。日本は2–2に追いつき、試合は最終セットへ。
運命の第5セット、歓声と悲鳴の狭間で
最終セット、日本はリベロ小島満菜美の好レシーブから流れをつかみかけた。
佐藤がバックアタックを決めるたびに、日本応援席は総立ち。点差はつかず、スコアは16–16のデュース。
そして――最後のラリー。石川が振り抜いたスパイクは、ブラジルの2枚ブロックに跳ね返され、コートに落ちた。
18–16。試合終了の笛が鳴った瞬間、日本選手たちはその場に崩れ落ち、涙をこらえきれなかった。
敗北の中の光
この試合で佐藤は 34得点 を挙げ、石川も苦しい場面で責任感を背負った。守備陣も何度も相手の強打を拾い続け、日本らしい粘りを示した。
観客席では「最後まで諦めない姿に感動した」「誤審が悔しい」といった声が飛び交い、SNSでも「涙が止まらない」「誇りをありがとう」との投稿があふれた。
歴史的な意味と未来への希望
日本女子は15年ぶりの世界選手権メダルに挑んだ。惜しくも逃したものの、世界2位のブラジルを追い詰めた内容は大きな収穫だ。
この戦いを経て、チームは確実に成長した。
選手たちの目には悔し涙とともに、次への決意が光っていた。
この敗北は、終わりではない。来年の国際舞台、そして未来の五輪へとつながる始まりなのだ。
結び
銅メダルは逃した。だが、日本が見せた戦いは敗北以上の価値を持っていた。
「あと一歩」の悔しさを胸に、彼女たちはきっと次の舞台でさらに輝くだろう。

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